魚には多くの種類がありますが、大きく分けると海にすむ海水魚と川や湖などにすむ淡水魚分けられます。
ここでは、海水魚と淡水魚ではどのような違いがあるのか記載しています。
海水魚と淡水魚の違い
魚には、海水でしか生きていけない海水魚、川、湖、沼、池などの淡水でしか生きていけない淡水魚があり、また、淡水と海水の両方で生きていける魚もいます。
生きていけるかどうかというのは、水の塩分濃度により決まります。
魚も人間と同じく呼吸をしなければ生きていけません。
酸素は水に溶けにくい気体で、水中の酸素濃度は低いため、効率よく酸素を取り込まなくてはなりません。その呼吸器官として魚はエラをもっています。
周囲の水から血液中への酸素の取り込みを容易にするために、エラの表面とその内部にある毛細血管の間の細胞層は数μm(μm:1mmの1/1000)という非常に薄い厚さになっています。
このことにより、魚の体内と海水、淡水の間で浸透圧が異なることにより、深刻な問題が生じているのです。
浸透圧とは、濃さの異なる液体が、半透膜という細かい穴の開いた膜で仕切られているとき、ふたつの液体が同じ濃さになろうとして、溶媒(ここでは水)が半透膜を通って移動する現象のことです。
浸透圧の例でよく出されるのがナメクジです。
ナメクジは、体の大部分が水分であるため、水分が蒸発すると死んでしまいます。このため、体表面は粘液で覆われていて、水分の蒸発を防いでいます。
そこに塩をかけられると、浸透圧の作用で体内の水分が粘液に吸い上げられて、体が縮んでしまいます。
魚と水との間でも同じことが起こります。
魚の血液などの体液には、人間と同じく、約0.9%の濃度の塩分が含まれています。
海水魚と淡水魚の間に体液の塩分濃度に違いはありません。一方、海水の塩分濃度は約3.5%です。
浸透圧の関係で、この薄い細胞層を通じて、淡水から魚へ、または魚から海水へ、水が移動してしまいます。
海水魚では、塩をかけられたナメクジのように体外に水が流出し、脱水状態になります。
逆に、塩分のほとんどない水で生息する淡水魚では、体内に水が侵入し、水ぶくれ状態になります。
魚の塩分濃度調節機能
魚は、上に記したような浸透圧による不都合を解消するために、エラ、腎臓、腸を用いています。
海水魚と淡水魚とでは、まったく逆の塩分濃度調節(浸透圧調節)機能を持っています。
海水魚
脱水されようとしている海水魚は、水を補給するために、水を大量に飲んで腸から吸収し、余分な塩分をエラから排出します。
魚の尿は体液と同じくらいの濃度しか作られず、尿の量は少量ですから、限りがあります。このため、エラからの塩分の排出が非常に重要となります。
淡水魚
淡水魚は水がどんどん体内に入ってきて、水ぶくれにならないように水はほとんど飲みません。
腎臓では塩分を回収しながら、多量の薄い尿を作って、体内に侵入した余分な水を外へ排出します。
腸から食物中の塩を吸収するとともに、エラからも塩分を取り込んでいます。
海水と淡水を行き来する魚
川で生まれた後、海で生活し再び川に戻ってくるサケやウナギは海水と淡水を行き来することができます。
これらの魚は浸透圧調節を環境に応じて器用に切り替えることができるのです。
しかし、環境を変える場合にはいきなり変えるのではなく、しばらくは河口付近の海水と淡水が混ざった場所で生活し、体を慣らしてから行います。
海水魚と淡水魚を共存できる方法
海水魚と淡水魚とは生息している水の塩分濃度は異なりますが、どちらも体液の塩分濃度は同じです。
岡山理科大学では、海水に含まれる約60種類の元素の中から、魚の浸透圧調節に関係しているナトリウム、カリウムなどの成分、濃度を特定して、これを淡水に加えて、海水魚と淡水魚が共存を可能にする好適環境水の研究を行っています。
この好適環境水は現在一般には販売されていませんが、箱根園水族館などの一部の水族館では使用され、同じ水槽の中で海水魚と淡水魚が飼育されています。
好適環境水で育てられた魚は淡水魚も海水魚も生育が早いそうです。
これは、好適環境水が魚の体内塩分濃度に近いので、常に成長の妨げとなっている浸透圧に対するストレスを受けずに済むためと推測されています。
また、好適環境水では魚の病気の原因となる寄生虫や病原菌が繁殖しにくく、病気が発生しにくいそうです。
しかし、好適環境水を使わなくても、マリンワールド海の中道のように、水槽の水の塩分濃度を魚の体液と同じ塩分濃度にすることにより、同じ水槽で海水魚と淡水魚を飼育しているところもあるようです。
まとめ
海水と海水魚、淡水と淡水魚のいずれもその塩分濃度の違いによる浸透圧で、エラを通じて、海水から海水魚へ、淡水魚から淡水へ水分が移動します。
このため、海水魚は脱水状態に、淡水魚は水ぶくれ状態になります。
この不都合を解消するために、エラ、腎臓、腸を用いて、海水魚と淡水魚とでは、まったく逆の塩分濃度調節(浸透圧調節)機能を持っています。
水族館の中には、水の塩分濃度を魚の体内塩分と同じにすることにより、同じ水槽内で海水魚と淡水魚を共存させて飼育しているところがあります。