家庭のコンセントの周波数は50Hzの地域と60Hzの地域があります。
一つの国で異なる周波数があるのは珍しく、50Hzか60Hzのどちらかに統一されています。
先進国の中で、異なる周波数があるのは唯一日本だけです。
ここでは、なぜ50Hzと60Hzの地域に分かれているのか、また、なぜ1種類に統一しないのか、50Hzと60Hzが混在していることによる影響についても記載しています。
なぜ50Hzと60Hzの地域があるの?
日本で発電事業が開始されたのは1896年(明治29年)です。
東京の電源周波数が50Hzに決まったのは、1896年(明治29年)に当時の東京電灯会社が、浅草発電所にドイツのAEG社から50Hzの発電機を購入したのが発端です。
一方、大阪に60Hzが採用されたのは、同じ1896年に大阪電灯会社が、アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)社から60Hzの発電機を購入したからです。
この2社がきっかけとなって、中部地方の富士川(静岡県)と糸魚川(新潟県)を境として、東日本は50Hz、西日本は60Hzの周波数となっています。
50Hz地域と60Hz地域
50Hzと60Hzの境界は地図で示すと以下のようになっています。
50Hz地区
北海道電力、東北電力、東京電力
60Hz地区
中部電力、北陸電力、関西電力、四国電力、中国電力、九州電力、沖縄電力
50HZ、60Hz 混在地域
・新潟県は大部分が50Hzですが、一部60Hzの地域があります。
・群馬県は大部分が50Hzですが、一部60Hzの地域があります。
・長野県は大部分が60Hzですが、一部50Hzの地域があります。
なぜ50Hz 60Hzを一つの周波数に統一しないの?
電力が供給されるようになった当初は、現在のような電気製品はまだなく、電力が必要なのは電灯(電球)だけでした。電灯は周波数に関係なく点灯するので周波数に対して人々は無頓着であったようです。
大正時代の初め頃から第2次世界大戦終戦の1945年頃までに4回の周波数統一の動きがありましたが、断念されました。
周波数を統一しない理由は、先ず、既存の設備の改修が必要となります。
それが長期間にわたると、改修費用が莫大となることや、改修期間中の電力の安定供給が難しくなることです。
さらに、どちらの周波数を変えるか、その費用負担の方法など、解決すべき問題は山積しているからです。
周波数が異なる地域に引っ越した場合、電気製品に影響はないの?
電気製品で周波数の違いにより影響が出るのは、主にAC(交流)モータを使用しているものです。
AC(交流)モータは50Hzでは回転数が小さく、60Hzでは回転数が大きくなります。このため周波数が変わると製品によっては使いものならないものがあります。例えば昔のレコードプレーヤーのようなものです。
昔の家電製品では周波数が異なる地域に引っ越す場合には、製品内部の部品や設定を変更する必要があるものがありました。
DC(直流)モータは50Hz、60Hz関係なく、同じ回転数で回転します。
現在ではDCモータを使用している電気製品が増加して、ほとんどの場合、何もしなくてもよいようになっています。詳しくは取扱説明書で確認してください。
現在でも低価格の扇風機はACモータを使用しているものが多くあります。
この場合50Hzでは回転数が小さくなるので、風量は弱くなり、60Hzでは回転数が大きくなるので、風量は強くなります。しかし、その差はごく僅かで、取扱説明書を見ても50Hzと60Hzで部品の変更が必要です、などとは記載されていません。
以上のように現在では50Hz、60Hzの違いを気にかける必要はほとんどなくなりました。
50Hzと60Hzの周波数変換はどのような時に必要?
先に記載したように、現在では日常生活においては50Hzと60Hzの違いをあまり意識する必要はありません。
しかし、大規模な自然災害が起こって、発電や送電設備が使えなくなった場合、他の地域から電力を融通する必要が生じることがあります。
2011年に起こった東日本大震災のときに、発電所が被害を受けたため、電力不足が生じました。
周波数が異なる電力会社からの供給は簡単ではないため、結局当時は計画停電が実施されました。
異なる周波数の送電線をつなぐには、間に50Hzと60Hzの周波数を変換する周波数変換所を介さなければなりません。
例えば60Hzの電源をコンバーターと呼ばれる装置で直流に変換し、次にインバーターと呼ばれる装置で直流を50Hzに変換する必要があります。
現在、この周波数変換所は新信濃周波数変換所、佐久間周波数変換所、東清水周波数変換所の3ヶ所です。これら3ヶ所で融通できる電力は120万kw程度です。
東日本大震災の際に東西での電力融通ができなかった経験から、現在増設工事を行っています。
以上、なぜ50Hzと60Hzの地域に分かれているのか、また、なぜ1種類に統一できないのか、50Hzと60Hzが混在していることによる影響についてご紹介しました。