真珠は一般の宝石と違い、貝から採取されます。
真珠は6月の誕生石となっていて、人気のある宝飾品ですが、なぜ貝から採れるのかご存じでしょうか?
ここでは、貝が真珠をなぜ作るのか、真珠の構造や色、歴史などをご紹介します。
貝が真珠を作るのはなぜ?
貝は海水を吸い込み、その中の栄養分を吸収して生きています。
海水を吸い込む時に一緒に砂、泥、小石なども吸い込みます。そういう場合、貝は大抵の異物は吐き出せるのですが、異物が貝殻と貝の体を覆う膜の間に入ったりしてどうしても吐き出せない時はその異物を体の中に保つしかありません。
その異物によって内蔵などが傷められないようにするために、外套膜という器官から、分泌物を出して、長い年月をかけてその異物が核となって幾重にも包み込みます。こうして出来上がったのが真珠です。
外套膜は貝などの軟体動物に見られる器官で、炭酸カルシウムを分泌して貝殻を作り出したり、呼吸をしたり、エサを取り込んだりするために必要な海水の量を調整する働きをします。
貝が真珠を作るのは、体内に入ってきた異物から体を守るための自己防衛本能によるものなのです。
天然真珠と養殖真珠の違い
天然真珠では砂、泥、小石などの異物が貝殻と貝の体を覆う膜の間に入ると、外套膜上皮細胞が異物を囲むように真珠袋を作ります。
その後、外套膜上皮細胞から分泌される真珠質が層となり、真珠層ができあがります。この真珠質の成分は貝殻の成分と同じです。
真珠の核となる異物が貝に入るのは、偶然によるため、天然の真珠が見つかる確率というのは、1000分の1程度なのです。
また、核となる異物は不規則な形状ため、できた真珠も宝飾品として使用できるものはほとんどありません。
このため、現在販売されている真珠はほとんどが養殖真珠です。
養殖真珠は、核となる異物の代わりに貝を真円形に削ったものと、後に真珠袋となる外套膜上皮細胞の切片(ピース)が貝の生殖巣に移植されます。
それ以降は貝の体内で起こる変化と過程は天然真珠と養殖真珠では同じです。
貝は真珠の大きさにより、7ヶ月から2年半の間養殖されます。
真珠の構造、成分、色
真珠の主成分は、炭酸カルシウムとコンキオリンと呼ばれるタンパク質の一種で構成されています。(炭酸カルシウムが約93%、コンキオリンが約4%)
真珠の内部構造はレンガの壁に似ています。炭酸カルシウムの結晶がレンガであり、コンキオリンがレンガのすき間を埋めるセメントの役割を果たしています。
コンキオリンに含まれている色素により、クリーム、ゴールド、プラックなど、表面から見える色が変化します。
このほか真珠の色は、核と真珠層の間に入り込んだ有機質の色によっても変わります。
さらに、真珠層の結晶の状態によって光の干渉現象が発生し、素晴らしい光沢が生じます。
真珠を作る貝の種類
異物の周りに殻を形成して身を守る本能がある貝は1000種類以上生息すると言われていますが、指輪やネックレスなどの宝飾品に使える美しい真珠を作るのは、アコヤ貝、シロチョウ貝、クロチョウ貝など限られた貝だけです。
日本では真珠の養殖に用いられる貝はほとんどがアコヤ貝です。
日本のアコヤ真珠は、ほかの真珠に比べて真円に近い球体の物が多く、色や照りが特に美しいと言われています。サイズは直径10mm程度までで、一般的には6~8mmが主流です。
アコヤ真珠の中でも照り、巻き、キズ、形、全てのグレードがAランクのものは花珠(はなたま)と呼ばれ、200個のアコヤ真珠の中から1個程の割合しか取れないと言われているほどとても美しく希少な真珠です。
海外においては、フィリピンではシロチョウ貝、オーストラリア、インドネシア、タヒチではクロチョウ貝、中国では川や湖に生息する二枚貝を使った養殖が行われています。
真珠の歴史
天然の真珠は、先に記したように貝に偶然に、砂、小石などが異物として、入ったことにより誕生したもので、非常に高価なものでした。
世界で最初に真珠を養殖するようになったのは中国人です。
13世紀頃、仏像の形をした薄くて小さなプレートを核として貝の中に入れ、仏像真珠と呼ばれる神具が造られています。
西洋では、1761年、スウェーデンの生物学者リンネが、淡水産の二枚貝の貝殻に小さな穴をあけて、細い銀線の先に石灰岩を付けて挿入する手法により、真珠を作る試みをしました。
本格的な真珠の養殖方法を開発した日本人です。
1893年、核となる物質を貝の体内へ入れ込むことによって、御木本幸吉氏が養殖の真珠を作り出すことに成功しました。しかし、その時は、半球型の真珠でした。
それから12年後、見瀬辰平氏と西川籐吉氏により、核と一緒に、貝の外部の細胞の一部を入れ込むことにより、真円の真珠を養殖することに成功しました。
以上、貝がなぜ真珠を作るのかその理由をご紹介しました。