渡り鳥は、卵を産み、雛を育てる繁殖地と、冬を越す越冬地を別々の地で過ごし、一年に春と秋の2回、定期的に 往復を繰り返します。こうした移動を「渡り」と呼びます。
ここでは、渡り鳥の種類やどういうルートで日本へやってくるのか、また、なぜ危険を冒してまで渡りを行うのかなどについて記載しています。
渡り鳥の種類
渡りをする鳥は夏鳥、冬鳥、旅鳥の3種類通りがあります。
どの種類の渡り鳥も夏に北の方の地域で繁殖、子育てをして、冬に南の方の地域で越冬をするということに変わりはなく、繁殖、子育てをどこの地域で行うかによります。
夏鳥
冬には日本より南の国で冬を超し、春に日本に渡来し、繁殖、子育てをし、秋には元の南の国へ帰っていく渡り鳥を夏鳥といいます。
ツバメ、カッコウ、ホトトギス、ヨシキリなどがその代表例です。
冬鳥
日本より北の地域で繁殖、子育てをする鳥は、秋に北方より日本に渡来して、春に再び北方に戻っていく渡り鳥を冬鳥といいます。
冬鳥として有名なのはカモ、ハクチョウ、ガン、ツル、ヒシクイなどです。
旅鳥
日本よりも北の地域で繁殖、子育てをして、日本よりも南の地域で越冬をするのが旅鳥です。
春と秋に日本を通過するときにだけしか見ることができない鳥で、シギ・チドリ類に代表される鳥です。
また、渡りをしないで一年中、日本で見ることのできる鳥は留鳥と呼ばれています。
留鳥の代表はスズメやハシブトガラスなどの鳥です。
渡り鳥の区分は観察する地域によって異なる
夏鳥、冬鳥といった渡り鳥の区分は観察する地域によっても異なっています。
例えば、カモやハクチョウなどは日本より北の地域で繁殖、子育てをして日本で越冬をしているので、日本では冬鳥ですが、日本より北の地域では夏鳥になります。
日本は南北に細長い地形をしているため、同じ日本国内でも地域によっても区分が異なる場合があります。
日本各地でヒヨドリは留鳥とされていますが、北海道では夏鳥とされており、冬になると本州に渡りをしていくのです。その際に本州にいたヒヨドリたちも同じ時期に南に移動している可能性があり、年中通して見られるヒヨドリも夏と冬でグループの入れ替えがあるともいわれています。
渡り鳥が日本に来るルート
渡り鳥の多くは、北半球の高緯度にある繁殖地から、低緯度地方にある越冬地を結ぶ南北方向に移動をします。
夏鳥のツバメやエゾセンニュウなど虫を食べる渡り鳥の仲間は、東南アジアから台湾、琉球列島を経て本州、北海道まで渡ります。
一方、ガン、カモ類、カシラダカなどの冬鳥は、シベリア、カムチャッカ、サハリンから北海道、本州へと南下します。
渡り鳥はなぜ渡るの?
渡り鳥はなぜ渡るのかという理由は、まだはっきりとはわかっていません。
「地球が氷河に覆われていた頃、 北に生息している鳥が南へ移動したのがその始まりだ」という説や、「昔は地球上には一つの大陸しかなかったのに、それが現在のように5つに分かれてしまったため、鳥の渡りが始まった」という説などがありました。
現在では、渡りをする一番の理由は食べ物を確保するためだと考えられています。
一年を通して日本にいるスズメやトビなどの留鳥は餌となる食べ物が櫨物の種子や動物の死体など、冬でも手に入るからです。
一方、ツバメなどの夏鳥は飛んでいる昆虫を主に食べます。春や夏には昆虫はたくさんいますが、秋から冬にかけては少なくなります。
このため、秋になると昆虫がたくさんいる東南アジアなどへ移動するのです
また、ハクチョウ、ガン、ツルなどの冬鳥は冬になると雪や氷で覆われ、餌となる食べ物がとれなくなるので、繁殖地であるシベリアや北極の大地から南の日本へ渡ってくると考えられています。
春や夏に北に戻って行くのは、日照時間が長くなるので、エサを確保する時間がたくさん取れ、そのため沢山のヒナを育てることができるからだと考えられています。
渡り鳥はなぜ道に迷わないの?
渡り鳥はどのようにして道に迷わずに目的地にたどりつくのでしょうか?
渡り鳥には、昼間に渡りを行うものと夜間に渡りを行うものの2種類がいます。
ツルやハクチョウのような大型の鳥は昼間に渡りを行い、ツバメのような小型の鳥は夜間に渡りを行うとされています。
小型の鳥は夜間に渡りをするのは、他の鳥に襲われる危険を避けるためだと考えられています。
太陽を見ている
昼間に移動する渡り鳥は太陽を目印にして方向を定めて目的地への道をたどるという説があります。
これを裏づける実験として、ハトやカモを一羽ずつ放し、飛んで行った方向を記録したところ、晴天の時は一定の方向に飛んだが、曇天の時は方向が定まらないという結果が出ています。
星を見ている
夜に渡りを行う鳥は太陽が見えないので、「太陽を見ている」という説とは異なる目印が必要ですが、太陽の代わりとなるのものとして、「星を見ている」という説があります。
ルリノジコ、ノドジロ、コノドジロなどの鳥をプラネタリウムに放ってみると、特定の星座
を頼りに方向を定めて飛ぶことが実験で確かめられています。
この説を裏付けるように、夜に渡りを行なう鳥が、曇って星が見えないときや流星が発生したときは方向を見失い、戸惑う姿が確認されています。
地磁気を感じている
目ではなく、人間にはない特別な器官を使って地磁気を感じ、方向を定めているとする説もある。
よく知られているように地球は北極がS極、南極がN極の巨大な磁石になっていて、人間はコンパスがないと磁極がわかりませんが、渡り鳥は目の中にある特別なタンパク質を使って磁場を感知でき、それによって方角を定めて、移動するという説があります。
以上が現時点での仮説です。詳しい研究が進んでこなかったのは、渡り鳥の移動を人間が継続的に追跡することができなかったためで、最近では超小型のGPSも開発されていて、今後の研究が待たれるところです。