日本人にとって、太陽に次いで馴染みの深い恒星といえば、七夕の星の織姫と彦星ではないでしょうか。
七夕伝説は、1年に1度だけ、7月7日の七夕の日に、天の川を渡って、織姫と彦星が会うことを許されるという物語ですが、実際に、織姫と彦星はどの星座のどの星なのでしょうか。
また、空のどこを見れば見つけられるのでしょうか。
織姫がベガ、彦星がアルタイル
夏の東の空を眺めると、天の川をはさむようにして、こと座のベガとわし座のアルタイルが向かい合っています。
この姿からこと座のベガを織姫に、わし座のアルタイルを彦星になぞらえるようになったのです。
このふたつの星に、はくちょう座のデネブを加えて、夏の大三角と呼ばれています。
いずれも一等星の星です。
デネブだけ、仲間はずれのような感じもしますが、七夕の伝説には、このデネブが現れる話もあるのです。
雨で天の川の水かさが増すと、織姫と彦星は会うことができません。
年に一度しかないチャンスなのに、会えないのはかわいそうだということで、手を差しのべるのがデネブというのです。
元の七夕伝説では、雨で天の川の水かさが増すと、天の川の上にカササギが翼を広げて織姫と彦星の橋渡しをする役となっていますが、カササギの代わりをデネブがするということです。
織姫と彦星の位置
ベガとアルタイルはどちらも一等星で明るいので、都会でも時刻と方角を間違えなければ、比較的簡単に見つけることができます。
夜空の暗いところでは、ベガとアルタイルのふたつの星を分けるように、天の川が流れているのですが、都会では夜空が明るいので、見ることが難しいです。
まず、織姫のベガは、純白の明るい星です。
7月7日の七夕前後だと、午後8時頃には真東の空に、午前3時頃には頭上にやってきます。
8月上旬では、それよりも2時間ほど早く、21時頃には頭上にきます。
9月上旬だと19時頃に頭上に、それを過ぎると西の空に傾きます。そのあたりの夜空では非常に明るい星なので、すぐにそれと分かります。
こと座のベガが見つかったら、それよりも南東側、やや低い空に目を移すと、一等星のわし座のアルタイルが見つかります。アルタイルはベガよりも暗いのが特徴です。
夏の大三角のもうひとつの頂点の星デネブは、ベガよりも少し遅れて東から追いかけてくるようにのぼってきます。やはり明るい星ですから、都会でも見つけることができます。
織姫と彦星の距離
ベガ(織姫)とアルタイル(彦星)の距離は15光年です。
これは光速で移動しても、15年かかって、やっとたどりつくほどの長い距離です。
これを日常生活に馴染みの単位kmで表すと、なんと約150兆kmに相当します。
人間の感覚では、とてつもなく、遠いなという感じがしますが、無限大の宇宙からすれば、お隣同士ということになるのでしょう。
地球からベガまでの距離が25光年、アルタイルまでは17光年、デネブまで1400光年あります。
地球から見ると同一平面上にあるように見える夏の大三角の3つの星の地球からの距離は実はこのように、まちまちなのです。
アルタイルとデネブは同じくらいの明るさに見えますが、見かけ上の明るさは、その星からの距離の二乗に反比例するので、アルタイルとデネブの本当の明るさは、1万倍近くもデネブの方が明るいことになります。
七夕の日は天気が悪い
七月七日の七夕の日は、例年、天気が悪いことが多く、なかなか星そのものも見えないことが多いものです。
この頃は、九州から東北までの平年の梅雨明けは7月中旬で、まだ梅雨明け前であることが多いからです。
明治5年(1872年)までは、太陰太陽暦といって現在の太陽暦とは異なる暦を用いていました。いわゆる旧暦です。
旧暦の7月7日は通常の年ですと、梅雨明け後、8月の頃になるため、江戸時代までは七夕の日には 、実際に夜空に浮かぶ月齢七の月と天の川、その両岸に輝く織姫星、彦星を眺めて盛大に祝ったようです。
日本は現在、太陽暦を用いているため、昔流の月に準じた暦というのは、公式には存在しませんが、天候や夏休みの関係もあって、七夕の行事を8月上旬のいわゆる 、月遅れの行事として行う地域も多いようです。
まとめ
七夕伝説の織姫と彦星は、夏の東の空に、こと座のベガとわし座のアルタイルが天の川をはさむように、向かい合って、輝いています。
この姿からこと座のベガを織姫に、わし座のアルタイルを彦星になぞらえるようになりました。
この二つの星とはくちょう座のデネブは夏の大三角と呼ばれています。
ベガとアルタイルの距離は15光年と、非常に遠い距離にあります。
ベガ、アルタイル、デネブは、同一面上にあるように見えますが、地球からベガ、アルタイル、デネブまでの距離は、それぞれ、25光年、17光年、1400光年と、まちまちです。
以上、ベガ(織姫)とアルタイル(彦星)の位置、距離についてご紹介しました。