タツノオトシゴは、外見が龍に似ていることから、龍の落とし子(龍が産み落とした子)と命名されています。
別名を海馬(ウミウマ、カイマ)、馬の子(ウマノコ)、馬の顔(ウマノカオ)、馬引き(ウマヒキ)、馬魚(ウマウオ)など馬に由来するものが多く、英語名ではSeahorse(シーホース=海の馬)といいます。
タツノオトシゴは分類上何類で、ユニークな特徴である、オスが出産をするということや、生態などについて記載しています。
タツノオトシゴは何類?
タツノオトシゴは甲殻類のエビやカニに似たような姿をしていますが、実は魚類です。
タツノオトシゴは、分類上、「動物界、脊索動物亜門、硬骨魚綱、ヨウジウオ科、タツノオトシゴ属」に属しています。
魚類は大きく分けると、体のすべての骨が弾力性のある軟骨でできた軟骨魚類と、石灰質が多く含まれた硬い骨をもつ硬骨魚類の2種類に分けられます。
タツノオトシゴは、タイ、イワシ、マグロなどと同じ硬骨魚類に属しています。
ちなみに、軟骨魚類はサメやエイ、ギンザメなどが含まれます。
硬骨魚類の中にも様々な魚が属していますが、タツノオトシゴはその中のヨウジウオ科に属しています。
ヨウジウオ科には、タツノオトシゴ以外にヨウジウオという魚が属しています。
ヨウジウオはそこまで知名度が高い魚ではありませんが、下のイラストのようにタツノオトシゴを引き伸ばしたような形をしています。
ヨウジウオは、体長約30cmほどになる魚で、海藻が生い茂る場所に棲んでいます。
タツノオトシゴが魚類である証拠
タツノオトシゴには、以下のような魚類の特徴をもっています。
・エビやカニのような甲殻類にはない背骨がある。
・体は鱗が変化した環状の硬い甲板に覆われている。
・浮き袋がある。
・エラで呼吸する。
・ヒレをもっている。
タツノオトシゴの生態
タツノオトシゴの仲間は世界中で40種以上の生息が確認されていますが、日本近海では、北は北海道から、南は沖縄まで、日本のほとんどの海で8種類の生息が確認されています。
タツノオトシゴは体長が1.5~35cmで、寿命は2~3年で、泳ぐ力が非常に弱く、流速が速いと流されてしまうため、流れのゆるやかな浅い海に生息しています。
タツノオトシゴは、よく海藻などにしっぽを巻きつけていますが、泳ぎが得意でないタツノオトシゴが、海水の流れに負けないようにしがみついているということなのです。
タツノオトシゴは周囲の環境に合わせて体色を変化させるので、水中ではなかなか見つけるのが難しいです。
体の構造は独特で、魚類でありながら、立って生活しているため、それに合わせた構造となっています。
腹ビレはなく、耳のような胸ビレがあり、その後ろについている穴が、エラになっていて、ここで呼吸をします。
また、背ビレと尻ビレもあり、背ビレと胸ビレを使ってゆっくりと泳ぎます。
元々、サンマをさらに細長くなったような形の魚だったのですが、進化の過程で身体がS字型に曲がり、縦にたたずむ変な魚になってしまったのです。
タツノオトシゴはオスが出産する
普通、魚のメスは適当な場所に産卵し、その卵の上にオスが精子を振りかけます。
卵はこのようにして受精し、そこから稚魚が生まれます。
タツノオトシゴは一夫一婦制で、一生に1匹の相手とだけ交尾をします。
タツノオトシゴの産卵はメスが行いますが、産卵場所はオスの育児嚢(いくじのう)の中です。
育児嚢はカンガルーやコアラなどの有袋目の哺乳類のメスの下腹部にある育児のための袋ですが、タツノオトシゴではオスが育児嚢を持っています。
メスは輸卵管をオスの育児嚢に差し込んで卵を産みつけ、オスの体内で受精が成立します。これがタツノオトシゴの交尾です。
育児嚢の中にはヒダがあるため、表面積は見かけより広く、すべての卵は柔らかい組織で包み込まれます。
メスが産む卵の数は約100~200個で、産卵後2~6週間でふ化し、オスは育児嚢から稚魚を出産します。この時、稚魚は5~20mmの大きさで親と同じ形をしています。
これは正確には出産ではなく、卵がふ化するまでの間、その場所を提供しているだけなのですが、稚魚を出す時、オスは産みの苦しみを味わい、難産であった場合は死んでしまうこともあるようです。
オスが稚魚を出産する頃には、メスは次の卵を準備していて、すぐにまた交尾を行います。
ヨウジウオの出産
タツノオトシゴの仲間にヨウジウオという魚がいます。
ヨウジウオもオスが出産しますが、ヨウジウオのメスはオスの腹部に直接卵を産みつけます。
そうすると、次第に卵がオスの腹部の中にめり込んでいき、最後には皮膚がその卵を覆ってしまうということになってしまいます。
このヨウジウオが進化したものが実はタツノオトシゴなのです。
タツノオトシゴはヨウジウオのような苦労をしないですませるために、育児嚢で育てる出産法を編み出したと考えられています。
タツノオトシゴの卵が育児嚢で育てられる理由
タツノオトシゴの卵が育児嚢で育てられるのは、メスが産む卵の数が、他の魚類に比べて圧倒的に少ないためと考えられています。
多くの魚は、卵を適当な場所に産みっぱなしにするため、卵から稚魚になるまでの間に、9割以上は他の魚に食べられるなどして死んでしまいます。
このため、多くの魚は大量の卵を産みます。イワシで数万個、マグロは数百万個、マンボウでは数億個くらい産みます。
これに対してタツノオトシゴでは、100~200個くらいしか卵を産まないかわりに、ふ化するまで、オスが育児嚢の中で卵を守ることで生存率を高めて、種を絶滅しないようにしていると考えられています。
まとめ
タツノオトシゴは分類上魚類に属し、その生態や、オスが出産することなどをご紹介しました。