イチゴは、ふくらんでいる果実と思われる部分と、その表面にある小さなツブツブと、5枚の緑の萼片(がくへん)からできているヘタとよばれる部分から成り立っています。
本記事では、この表面のつぶつぶの正体は何なのかご紹介します。
イチゴの実のでき方
一般に果物の実のでき方に着目すると、大きく真果と偽果に分けることができます。
植物は通常、めしべに花粉がついて受粉すると、めしべの下部にある子房という部分に光合成で作られたデンプンや糖がたまり始め、大きくなって果実になります。
このような実が真果です。
これに対して、子房以外の部分が大きくなった実は偽果です。
ウメ、モモ、カキなどは真果、イチゴ、リンゴ、ナシ、イチジクなどは偽果に分類されます。
イチゴのめしべに花粉がついて受粉すると、光合成で作られたデンプンや糖は花托(かたく)と呼ばれる花を支える部分にたまって大きく肥大化します。
私たちが食べるイチゴの甘くておいしい部分は、花托が肥大化してできたもので、真の果実ではないことから偽果と呼ばれています。
イチゴのつぶつぶの正体はなに?
イチゴの実の外側についているつぶつぶは受粉前、めしべの子房であった部分で、このつぶつぶは痩果(そうか)といって、いちごの果実なのです。
痩果は「果肉がない1個の種子をもつ果実」という意味で、つぶつぶの1つの中に、胚珠であった種子が入っています。
イチゴのつぶつぶは厳密にはイチゴの果実であり、種子ではありませんが、ツブツブの中に種子があり、その周囲にはツブツブの薄い皮があるだけなので、ツブツブを種子と考えても差し支えありません。
イチゴはタネの数だけ大きくなる果物
イチゴは、「タネの数だけ、大きくなる果物」といわれています。
イチゴの食用部を薄く切って光にかざすと、つぶつぶのある部分と果肉の部分が筋状のものでつながっているのが見えます。
つぶつぶの中にある種子からこのつながりを通して、可食部を肥大させるための物質が送られています。
タネは、食用部の表面に埋まっているだけでなく、食用部とつながっているのです。
イチゴの実を大きく肥大させるのは、タネから出るオーキシンという植物ホルモンです。
イチゴの花が咲いて、小さなイチゴの食用部が肥大し始める前に、表面のツブツブをピンセットで全部取り除くと、イチゴの食用部は肥大しません。
また、下半分のツブツブだけを取り去ると、上半分は肥大しますが、下半分は肥大しません。
オーキシンは、イチゴだけでなく、トマトやナスの実も肥大させることができます。
本来、果実は種子がないと大きくならず、種子は受粉しないと作られませんが、オーキシンをトマトやナスの花に吹きかけると、受粉せずに果実ができます。
このようにして、大きくなったトマトやナスの実は、「タネなし」です。
イチゴの殖やし方
植物の一番オーソドックスな繁殖方法は、おしべの花粉がめしべに受粉して種子を実らせるという有性生殖です。
しかし、植物のなかには有性生殖だけではなく、別の方法で子孫を残すものがあります。
そのひとつが栄養生殖です。栄養生殖は栄養繁殖とも呼ばれ、おしベやめしべといった生殖細胞を用いずに、自分のクローンを作り出すことにより、 子孫を殖やします。
イチゴは種子であるつぶつぶで、殖やす以外に、ランナーによっても殖やすことができます。
種子により殖やす
イチゴのつぶつぶには、いちごの種子が入っているので、まいて正しく世話をすれば発芽します。
イチゴを種子から育てる場合は、可食部のつぶつぶを傷つけないように1個ずつ取る必要があります。
イチゴの種子は他の野菜や果物と違い、発芽に時間がかかり、日光、水の与え方、温度、土壌の条件などにより、発芽するまでの時間は変わってきます。
また、花を咲かせてイチゴの実ができた場合、遺伝子の交雑の結果としてできるので、味は親のものと同じではなく、たいていの場合はすっぱくなります。
ランナーにより殖やす
栽培植物の場合は、栄養繁殖をすれば、元の個体と同じ性質のものを増やすことができるので好都合です。
ランナー(匍匐茎)は地面を這うように伸びた茎のことで その途中から芽を出して殖えていきます。
イチゴは収穫後、一段落ついた頃からランナーが出始めてランナーの先端に子株ができます。
一株から大体4,5本のランナーができるので20株以上の新しい苗を作ることができます。
まとめ
イチゴの表面にあるツブツブは痩果と呼ばれるイチゴの果実です。
私たちが食べている果実だと思われている赤い部分は、痩果を保護する役割を果たしている花托が肥大化したものです。
痩果の数と花托の大きさは比例関係にあり、痩果の数が多いと花托も大きくなり、いちごのサイズは大きくなります。
イチゴは種子以外にランナーによる栄養生殖でも殖やすことができますが、通常、ランナーにより殖やされています。