ケミカルライトは、コンサート、イベントなどで演出効果をあげるために欠かせない必需品となっているもので、100円ショップなどでも販売されています。
海外メーカにより、ケミカルライトとして、サイリュームの商標登録がされているので、日本では、商標登録されていないサイリウムと呼ばれることが多いようです。
ここでは、ケミカルライトが光る原理、仕組みについて記載しています。
ケミカルライトが光る原理,仕組みとは?
ケミカルライトは化学反応によって発光する化学発光により、光を発生させます。
化学発光
化学発光は、化学反応により分子を励起状態とよばれるエネルギーの高い状態にし、そこ
から、元のエネルギーの低い基底状態に戻る時に光を放つ現象です。
酸化反応を起こさせると、電子エネルギーを吸収した分子は励起状態という不安定な状態であるため、通常はエネルギーを放出して、元のエネルギーの低い基底状態に戻ろうとします。
このとき、励起状態と基底状態とのエネルギー差を通常は熱として放出します。
しかし、放出されるエネルギーが可視光線の場合、発光として現れます。このような発光を化学発光と呼びます。
ケミカルライト
ケミカルライトは化学発光の一種です。
ケミカルライトのスティックには、溶液Aと溶液Bが入っています。
溶液Aは、ガラス製のアンプルに入れ、そのアンプルが溶液Bとともにポリエチレンのスティックに入れられ、密閉されています。
スティックを曲げて内部のアンプルを割ることにより、2種類の溶液が混ざり合います。
溶液Aにはシュウ酸ジフェニルと蛍光色素の混合物、溶液Bには過酸化水素とサリチル酸ナトリウム(触媒)が入っています。
シュウ酸ジフェニルと蛍光色素の混合物が過酸化水素と混ぜることにより、シュウ酸ジフェニルが過酸化水素によって酸化されて分解し、フェノールと過シュウ酸エステルが生じます。
過シュウ酸エステルは更に酸化をして 1,2-ジオキセタンジオンとなります。
1,2-ジオキセタンジオンは、不安定で高いエネルギー準位にあるため、蛍光色素にエネルギーを与えて二酸化炭素へ変化します。
エネルギーを与えられた蛍光色素は励起状態になりますが、不安定なため、安定なエネルギーの低い基底状態に戻ります。
この時にエネルギーの差分を光として放出します。これがケミカルライトの発光です。
下記は簡略化した化学式です。
シュウ酸ジフェニル+ H2O2→フェノール+過シュウ酸エステル
過シュウ酸エステル+蛍光色素(基底状態)→2CO2+蛍光色素(励起状態)
蛍光色素(励起状態) →蛍光色素(基底状態)+光
ケミカルライトの色は蛍光色素の種類を変えることにより、変更することができます。
例えば、
ローダミンB:赤橙色
アントラセン:薄紫色
エオシンY: 黄橙色
ルブレン: 黄色
ナフタセン:緑色
です。
ケミカルライトの特徴
ケミカルライトは、酸素を必要とせず、毒性や引火性がないため、屋内、屋外に関わらず、安全に使用することができます。
また、熱をほとんど発生しないので冷光と呼ばれています。
緑、赤、黄色、白、青などの20種類以上の色調のものが販売されています。
常温であれば、通常6~8時間の発光が可能で、数分間の発光時間で高い輝度のものもあります。
ケミカルライトの歴史
アメリカでは、1960年代にアポロ計画という有人宇宙飛行計画が実施されていましたが、宇宙空間で火や電気を使用せずに、安全に光を起こせるものとして、ケミカルライトが発明されました。
日本のルミカという企業がこれに目をつけ、1979年に商品化した第1号がケミホタルという夜釣り用の釣り道具です。
ケミホタルは糸の位置を判別したり、光で魚を寄せるために使用します。
1982年には、現在も見られるようなコンサートやイベントなどで使われるケミカルライト類が販売されるようになりました。
また、ケミカルライトは防災用として、緊急避難時の簡易ライトとしても使用されます。
まとめ
ケミカルライトは、サイリウムと呼ばれることが多く、コンサート、イベントなどの演出効果を上げるための必需品です。
ケミカルライトは化学発光の一種で、その原理、仕組みは以下のようなものです。
シュウ酸ジフェニルという物質を過酸化水素により、酸化させ、それによってできた過シュウ酸エステルがさらに酸化し、その結果できた励起した物質が基底状態になるために、エネルギーを放出し、このエネルギーが蛍光色素に与えられて、蛍光色素が励起し、基底状態に戻る時に光の形でエネルギーを放出します。これがケミカルライトの光です。