地球上では、さまざまな自然現象があり、その中にはとても美しいものや不思議なものも少なくありません。その中で、最も美しく、幻想的なものの一つがオーロラです。
ここでは、オーロラが発生する仕組みや色の違いの理由について記載しています。
オーロラは、一言でいうと、太陽から太陽風と呼ばれる電気を帯びた粒子(プラズマ粒子)が地球の大気と衝突して、引き起こされる発光現象です。
オーロラが発生する仕組み
太陽活動
固体、液体、気体に続く物質の第4の状態をプラズマといいます。
プラズマは、原子を構成しているプラスの原子核とマイナスの電子がバラバラの状態になり、自由に動きまわる荷電粒子の集まりのことをいいます。
太陽が輝いているのは、重力により閉じ込められたプラズマの中で、核融合反応が起こっているからです。
太陽の表面には、太陽半径の数倍のコロナが広がっています。
コロナは、100万度以上のプラズマからできていて、太陽自身の引力でひきつけられていますが、つなぎ止めることができないで、放出されたプラズマは、太陽風と呼ばれ、地球へも到達します。
太陽風の原因となるのは、太陽フレアとコロナホールです。
太陽フレアは太陽の表面で起こる爆発現象で、太陽の赤道付近の低緯度でよく起こります。
その発生原因は、よく分かっていませんが、太陽黒点の磁場と深い関係があるとされています。
太陽フレアが発生した2~ 3日後に、活発なオーロラが出現することがよくあります。
太陽風のもう一つの原因は、コロナホールです。
コロナホールは高速の太陽風が吹き出している場所で、太陽の高緯度に多く見られますが、赤道部分にも現れ、太陽自転とともに動きます。
したがって、太陽の自転周期27日毎に地球は強い太陽風を受けることになります。
太陽活動は約11年周期で変動することが知られていて、オーロラの出現ピークは1つの太陽活動周期の中に2つあります。
1つは太陽フレア、もう1つはコロナホールが原因のもので、両者の活動ピークは数年ほどずれています。
地球は大きな一つの磁石と考えられ、地球全体を包み込む巨大な磁場を形成しています。
地球に磁場が形成されなかったならば、強い放射線を伴う太陽風が直接地球に押し寄せ、地球には大気も水も存在できず、生命の誕生はなかったと考えられています。
オーロラが発生する仕組み
太陽風のプラズマ粒子は千Vから1万Vくらいまでの電圧で加速され、地球の外から地球の磁力線に沿って大気中に飛び込んできます。
この荷電粒子のエネルギーは、陽イオンと電子で構成される高温のプラズマです。
地球の大気には、酸素原子と窒素分子が存在しています。
このプラズマ粒子が大気中の酸素原子や窒素分子と衝突すると、持っていたエネルギーを大気中の酸素原子や窒素分子に与えます。
エネルギーを与えられた酸素原子や窒素分子は励起状態と呼ばれるエネルギーの高い状態になります。
励起状態は不安定なため、元の安定な基底状態に自然に戻りますが、この時、2つの状態のエネルギーの差の分だけ光を放出することになります。このエネルギー放出による発光が、オーロラとして発光します。
オーロラの色の違い
オーロラの高さ
オーロラが光る高さは、高度が約80km~500kmくらいの電離層と呼ばれるところです。
大気圏では高度が低くなるほど、大気に含まれる原子や分子の密度は濃くなっていきます。
そして、これは宇宙から降り注ぐプラズマ粒子に対する地球の防御壁が強くなっていき、プラズマ粒子は侵入することができなくなります。
高度が高すぎると、大気の密度が非常に薄いので、プラズマ粒子と大気中の原子の衝突が起こらないため、高度500km以上ではオーロラは発生しません。
オーロラの色は、大きく分けると下から紫、緑、赤からなります。
色は一般に、光の波長の長さの違いにより、赤、黄、青、緑、紫などに変化します。
波長が短い光ほどエネルギーは大きく、波長が長い光ほどエネルギーは小さくなります。
紫色の光は、波長が短いので、エネルギーは大きく、赤色の光は、波長が長いので、エネルギーは小さくなります。
オーロラの光は大気の酸素原子や窒素分子が励起状態から元の基底状態へ戻る時のエネルギーの差分を光として放出しますから、エネルギー差が大きいと、ピンクや紫色、小さけれ ば、赤色、その中間で緑色を発光させることになります。
原子や分子の励起状態や基底状態のエネルギーは、量子力学によって決まったいくつかの離散的な状態しか持つことができないので、オーロラの色は虹のように連続的な色彩を放つことはなく、ある程度決まった色でしか光ることはできません。
高度 約200km ~500km …赤色
プラズマ粒子のエネルギーが小さい場合には、高度約200km~500kmの範囲で酸素原子 に衝突して赤色の光を発します。
高度 約100km ~200km …緑色
高度が約100km ~200kmでは酸素原子の密度が高くなるので、プラズマのエネルギーが、より強くないと、侵入することができません。
赤色の発光と同じように酸素原子が励起して発光しますが、衝突するプラズマのエネルギーが強いため、酸素電子は赤色の時より、よりエネルギーの高い励起状態になります。
このため、元の基底状態に戻る時は、差分のエネルギーを赤色よりエネルギーの大きい緑色の光を発します。
同じ酸素原子でも、高度により発光色が異なるのはこのためです。
高度約80km ~100km …紫色、ピンク
高度約80km ~100kmでは、酸素原子の密度は減り、酸素原子よりも重い窒素分子の密度が増えます。
ここまでプラズマ粒子が到達するには、かなり強いエネルギーが必要となります。
そのため、プラズマが衝突する窒素分子や窒素分子イオンを励起させるエネルギーも強く、励起状態と基底状態の差のエネルギーがより大きくなることで、ピンク色や紫色の光を発します。ピンク色は窒素分子、紫色は窒素分子イオンによるものです。
まとめ
オーロラは、太陽から放たれた太陽風のプラズマ粒子が、地球に到達して、大気中の酸素原子や窒素分子と衝突して、エネルギーを与えられた結果、励起状態になります。
励起状態は不安定なため、元のエネルギーの低い基底状態に戻る時、そのエネルギーの差が光の形で放出されます。これがオーロラが光る仕組みです。
オーロラは、約80~500kmの高度で光ります。
オーロラの色は下層から順に紫、緑、赤に見えます。
大気中の原子、分子の種類やプラズマ粒子のエネルギーの大きさが、オーロラの色が違ってくる理由です。