身近に使用している電気には、大きく分けて直流と交流があります。
乾電池や車のバッテリーなどは直流で、各家庭のコンセントにきている電気は交流です。
ここでは、直流と交流の違いや家庭用のコンセントはなぜ直流ではなく交流なのかについて記載しています。
直流と交流の違い
身近に使用している電気には、大きく分けて直流と交流があります。
直流
直流とは上の図に示すように、電圧や電流の大きさが時間的に一定で変化せず、電気の流れがいつも同じ方向なものをいいます。
乾電池、車のバッテリー、OA機器などに接続するACアダブターの出力などはその例で、乾電池の電圧は1.5V、車のバッテリーは12V、ACアダプタの出力は5~24Vと電圧の大きさは目的により違います。
交流
交流とは一定の周期で電圧や電流の大きさがプラスとマイナスを交互に繰り返すものをいいます。
交流の中で代表的なものは波形が正弦波になっているもので、正しくは正弦波交流と呼ばれます。一般に交流といえばこれを指します。
家庭用のコンセントにきている電気は交流の代表で、ほとんどは100Vですが、能力の大きいエアコンでは200Vが使用されています。
交流は同じ波形を繰り返しますので、1秒間に何回繰り返すかが重要になってきます。
この1秒間の繰り返し数を周波数といいます。周波数の単位にはHz(ヘルツ)が用いられます。
日本では家庭用電源の周波数は50Hzと60Hzが用いられています。
なぜ一般家庭のコンセントは交流なの?
日本の一般家庭にきている商用電源は 1896年に開始されました。
その頃はまだ、日本は技術的に遅れていて、電気を起こす発電機などは、アメリカ、ドイツから技術を導入して発電事業を開始しました。
世界で初めて発電事業を開始したのは電球などの発明で有名なエジソンです。この時、エジソンは交流ではなく、直流での発電事業を開始しました。
直流発電
電気を送るには発電所が必要です。
1882年エジソンによりロンドンで世界最初の発電所が作られ、同じ年にニューヨークでも発電所の操業が開始されました。この時の発電は現在のような交流ではなく直流でした。
日本において発電所といえば山奥の水力発電所や郊外の火力発電所など都会にあるイメージは全くありません。しかし、エジソンが作った発電所は町の中央に建設されました。
その当時、発電所から家庭までは直接、送電線で結んで電気を送っていました。
この方法では電気を使う家庭が多くなると、全体として流れる電流が多くなります。
発電所と家庭を結ぶ送電線には電気抵抗があります。
電気抵抗があるところを電流が流れると電圧降下という現象が起こります。
送電線の電気抵抗をR、流れる電流をI、電圧降下をVとするとオームの法則により、電圧降下はV=I×Rとなります。
この電圧降下により、発電機で発生する電圧より家庭で使用できる電圧が小さくなってしまいます。
電圧が下がるなら上げればよいのですが、直流の電圧は簡単に上げ下げすることはできないという欠点があるのです。
当時は現在のような家電製品はなく、電気を利用するのは電灯(電球)のみでした。
電灯の明るさは、電圧の約4乗に比例する性質があるので、少しの電圧の低下が電灯の明るさに大きな影響を与えます。
発電所の近くの家の電灯は明るく、発電所から遠くなればなるほど送電線の電圧降下が大きくなって電圧が下がるので電灯は暗くなりました。
このような問題があったため、発電所から家庭までの距離はせいぜい2kmくらいしかとれず、多くの家庭に電気を供給するには、町中に発電所を建設する必要があったのです。
直流発電は以上のような問題があり、変圧器を使用することで電圧の上げ下げを容易にする交流方式が考えだされました。
交流発電
交流を発明したのはニコラ・テスラという人物です。
交流による発電事業を推進したのはウェスティングハウス社とテスラでした。
交流の利点は、変圧器を用いて電圧の大きさを変えられることです。変圧器を発明したのもニコラ・テスラです。
家庭にどれだけの電気エネルギーを送れるかは電力という量で決まります。
この電力は大まかにいうと電圧Vと電流Iの積で決まります。(厳密には力率という要素が入ります)
同じ電力を家庭に送る場合、電圧を大きくすればするほど電流は小さくてすみます。
電流が小さいと送電線による電圧降下が少なくてすみ、遠くまで電力を供給できるようになります。
交流の電圧を上げ下げするのが変圧器です。
変圧器とは下図に示すように、鉄でできた鉄心にコイルを二つ巻いたものです。一方のコイルの巻数をN1としてこれに電圧V1を加えたとき、もう一方のコイルの巻数をN2とすると、このコイルにはV2=(N2/N1)V1の電圧が現れます。
このように変圧器を使うとコイルの巻数を変えるだけで簡単に電圧の大きさを変えることができるのです。
直流は変圧器では電圧の大きさを変えることはできません。
発電機で発生させる電圧にはある程度限度があるため、それを変圧器で大きな電圧に変換します。
そして大きな電圧、小さな電流で電力を送り、家庭や工場に近づいたら変圧器を使って大きな電圧を100Vや200Vの小さな電圧に変換するようにしています。
日本では発電所から変電所では数十万V、変電所から住宅の付近までは6600V、住宅の付近の柱上変圧器で100V、200Vに電圧を落としています。
以上のように世界初の発電事業は直流でしたが、電圧を変えることができないという致命的な欠点があり、電圧を変えることができる交流発電が世界中に広がりました。
日本でもアメリカやドイツから交流発電の技術を導入して、発電事業が始まり現在に至っています。
以上が日本の家庭用コンセントの電源が交流になっている理由です。