喫茶店で使われている氷、コンビニで販売されている氷は透明なきれいな氷です。
一方、家庭の冷蔵庫で作った氷は白く濁っています。この白い部分の正体は何なのでしょうか?
また、どうすれば、透明な氷を作ることができるのでしょうか?
氷の白い部分の正体は?
冷凍庫から氷を取り出すと外側は透明なのに、内部には白い部分があります。この部分には何も入っていませんし、特に変わった味もしません。
実は、この白い部分は空気なのです。
なぜ、氷に空気が入ってしまうの?
一般に気体は、水に溶け、圧力が高くなるほど、また、温度が低くなるほど水に溶けやすくなります。
例えば、炭酸飲料は水に二酸化炭素を溶かしたものです。
空気の主成分は、窒素と酸素ですが、水の中には、元々空気が少し溶けています。
魚は水に溶けている空気の成分である酸素を取り入れて呼吸をしています。
もし水に空気が全く溶けていなければ、魚は呼吸をすることができないので、生きていくことができません。
水が凍って氷の結晶になる時には、氷の結晶には他の物質は入り込むことができないため、空気は氷から追い出されます。
凍っている部分が増加すると液体の水が減少しますが、溶けている空気は凍っていない水中に残るため、空気は濃縮されます。
急速に冷凍すると温度が低くなるため、気体である空気は溶けやすい条件になりますが、凍っていない水の量がなくなるため、空気は溶けていられなくなります。
冷やす速度が速いと、濃縮された空気が追い出されるよりも、空気の周囲を氷で先に囲まれてしまうため、空気が外部に逃げることができなくなり、白い部分ができるのです。
氷で閉じ込められた空気はどうして白く見えるの?
水や氷は透明なため、光は通り抜けますが、氷の中に残った空気の気泡の部分と氷の境界は凸凹面になっています。
太陽光は元々白く見える白色光線です。
氷と気泡の境界面では、太陽光に含まれる全ての波長の光が乱反射するので、空気の気泡の部分は白く見えるのです。
透明なガラスが割れた時の破片や、かき氷のような細かい氷が白く見えるのと同じ理由です。
家庭でできる透明な氷の作り方
空気が溶けていない水を準備する
透明な氷を作るためには、白くなる原因となる空気が溶けていない水を用意する必要があります。
気体は、温度が低くなるほど水に溶けやすくなり、温度が高くなるほど水に溶けにくくなります。
水に溶けることができる空気の量も、温度が高くなるほど少なくなっていきます。
例えば、1気圧では、20℃の水1ℓに溶けることができる空気の体積は、約18mℓですが、温度が80℃になると、溶けることができる空気の量は約11mℓになります。
このため、水を加熱していくと、沸騰する前に、溶けきれなくなった空気が小さな泡となって出てきます。
水をさらに加熱していくと、ついには沸騰が始まります。
沸騰が始まって水蒸気の泡が出はじめると、水蒸気の泡の中には空気はほとんど含まれていないので、水に溶けていた空気は水蒸気の泡の中にどんどん抜け出ていきます。
そして、水の中の空気は水蒸気と一緒にどんどん逃げ出していきます。こうして、水を沸騰させ続けると、水に溶けていた空気の大部分は抜けてしまいます。
水を加熱して空気の大部分を抜いてしまうためには、単に水を温めるだけではなく、ある程度の時間、沸騰させ続けることが必要です
氷ができる速さをできるだけ遅くする
水を沸騰させることにより、かなりの量の空気を水から追い出すことができますが、水をさましたり、製氷皿に移す段階で空気が少し溶け込んでしまいます。
この水から透明な氷を作るためには、なるべく遅く冷やす必要があります。
水が氷になる速さが速すぎると、凍る段階で水から空気が逃げ出せないので、空気が逃げ出せる程度の速さで凍らせるようにします。
ゆっくり凍らせるようにするには、冷凍庫の温度調整をなるべく高い温度にしておきます。
また、冷凍庫の壁や底に直接製氷皿が触れないように、発泡スチロールなどの断熱材で製氷皿を覆ったり、割り箸の上に製氷皿を置くなどの工夫が必要です。
ある程度まで凍らせたら、残った水は捨てる
水が凍るにつれて、空気は凍っていない水に濃縮されていきます。
3分の2くらいまで凍らせたら、凍っていない残りの水は捨ててしまいましょう。
こうすることで、透明な氷を作ることができます。
透明な氷は溶けにくい
透明な氷は、ゆっくり時間をかけて凍らせます。
ゆっくりと凍らせた氷は、急速に凍らせた氷より結晶が大きくなります。
氷は表面から溶ける以外に、氷を構成している結晶のつなぎ目からも溶けるため、結晶が大きいほど、つなぎ目が少なくなるので溶けにくくなります。
まとめ
冷蔵庫で作った氷が白く濁っている部分の正体は空気です。
家庭でできる透明な氷を作る方法は以下のようになります。
・沸騰させてできるだけ溶けている空気を追い出す。
・製氷皿に水を移し替えて、できるだけゆっくり凍らす。
・3分の2くらいまで凍らした後、凍っている水は捨てる。