サボテンは、降水量が少なく、冬と夏あるいは昼と夜の温度差が大きい砂漠のような乾燥地帯で生息しています。
このような環境下で生存する方法として、わずかな水分を体内に蓄え、それをなるべく蒸発させないような工夫をしています。
本記事では、サボテンには、なぜトゲがあり、茎が多肉化しているのかを記載しています。
サボテンの茎
サボテンは、茎が太くなっていて、茎の中の貯水組織が発達し、細胞の中に水が貯められるようになっています。
サボテンの貯水組織は、水を引き付ける性質を持つ多糖類から構成される粘液を含んでいて、この粘液が水の保持に役立っています。
茎が太くなると、表面積が大きくなってしまうので、蒸発する水の量も多くなります。
体積に対して表面積がもっとも少ない形状は球なので、表面積を小さくするために、サボテンには丸みをおびた形状のものが多いのです。
また、茎の表皮には硬いクチクラという層を発達させて、貯めた水の蒸発を防いでいます。
サボテンにトゲがあるのはなぜ?
植物の葉には、気孔から水蒸気が放出される蒸散作用があります。
ウチワサボテン、ボウサボテンなど、ほとんどのサボテンでは、表面積をできるだけ少なくして、水分の蒸発を減らすために葉はトゲに変化しています。
トゲは刺座(しざ)と呼ばれるサボテン特有の器官から発生します。刺座はトゲの付け根にある綿毛の座布団のようなものです。
サボテンのトゲにはどのような働きがあるのでしょうか?
動物に食べられるのを防ぐ
トゲの役割の一つは動物から身を守るためです。
砂漠のような乾燥地帯では、草食動物の餌となる植物は少ないので、茎などに水分を多く含んでいるサボテンは狙われやすいのです。
水の少ない環境では、食べられた箇所を再生するにしても時間がかかるので、食べられた場合のダメージは大きくなります。
トゲがないとたちまち食べられてしまうので、トゲにより動物に食べられるのを防いでいるのです。
温度調節
トゲは温度調節の役割も果たしています。
サボテンはトゲを密生させることで、光を錯乱させて、茎に光が当たらないようにしています。
また、細いトゲの先端に空気中の水分が吸着して温度を下げる効果もあります。
サボテンのトゲをすべて取り除いてしまうと、茎の温度が上がってしまうことが知られています。
繁殖
繁殖範囲の拡大にトゲを利用するサボテンもいます。
メキシコからアメリカ南部にかけて生息しているチョヤというサボテンは、非常に鋭いトゲを持ち、刺さると簡単には抜けず、振動や風でサボテンの節から簡単に外れて、動物の体についたまま遠くに運ばれて移動し、落ちたところで根を張って繁殖する性質を持っています。
近くを通った人間や動物に飛びつくように見えることから、ジャンピング・カクタスと呼ばれています。カクタスは英語でサボテンのことです。
水分の吸収
砂漠では昼と夜の温度差が大きく、霧や朝露が発生することがあります。それをトゲで捕まえて、トゲの根元から体内に水を取り込むことができます。
サボテンの光合成
植物は、葉で光合成を行いますが、葉をトゲに変化させたサボテンでは、光合成をおこなうことができません。
そこで、サボテンは茎で光合成をおこなっています。
通常の植物は太陽の光が当たる昼間に、葉にある気孔から二酸化炭素を取り込み、根から吸収した水を使って光合成をおこなって糖分を生成し、余った酸素と水蒸気を気孔から排出しています。
これは暑さの厳しい時間帯に気孔を開くことになり、水の無駄遣いにつながります。
そこでサボテンでは、昼間は気孔を閉じ、光合成に必要な二酸化炭素は気温の低い夜に取り込んでおくことにより、水の損失をできるだけ防ぐようにしています。
夜間に取り込んだ二酸化炭素をリンゴ酸に変えて体内に蓄えておき、昼になると気孔を閉じて水分の蒸発を防ぐと同時に、蓄えたリンゴ酸を分解して二酸化炭素を発生させ、光合成に利用しています。
このような光合成をCAM型光合成と呼んでいます。
まとめ
砂漠のような乾燥地帯で生息しているサボテンは、生存するために、わずかな水分を体内に蓄え、それをなるべく蒸発させないような仕組みが備わっています。
その仕組みが、多肉化した茎と葉が変化したトゲです。
茎は貯水組織が発達し、多くの水分を蓄えています。
葉を広げていると、水分が蒸発するため、サボテンでは、表面積を最小にするため、葉を変化させトゲになっています。
トゲには、(1)動物に食べられるのを防ぐ、(2)温度調節、(3)繁殖、(4)水分の吸収の働きがあります。