ブラックライトは、探傷検査などの産業用として以前から使用されていますが、最近では低価格で入手できるようになり、100円ショップでも販売され、その視覚効果により、よく話題にされるようになってきています。
ここでは、ブラックライトによって光る原理、仕組みや、ブラックライトにはどのような種類があるのかを記載しています。
ブラックライトとは?
紫外線は波長が100nmから400nmの範囲の光のことで、太陽光にも紫外線が含まれています。nm(ナノメートル)は1mの10億分の1の長さです。
紫外線は波長により、UV-A、UV-B、UV-Cの3つの領域に分かれます。
UV-A: 315~400 nm
UV-B: 280~315 nm
UV-C: 100~280 nm
ブラックライトは紫外線のうち、UV-A領域の紫外線を放射する装置のことで、紫外線ライトやUVライトと呼ばれることもあります。
人間が見える光の波長は380nm~780nmの範囲なので、400 nm付近の波長の紫外線を放射するブラックライトでは目でもわずかですが、確認できる場合があります。
販売されているブラックライトの波長は、365nm、370nm、375nm、380nm、395nmの波長のものが多いようです。
ブラックライトで光る原理、仕組み
ブラックライトの光を物体にあてると光って見えるのは、その物体に蛍光物質が含まれているからです。
蛍光物質は、ある波長の光を吸収すると、それとは違う波長の光を放出する性質のある物質のことです。
蛍光物質内の原子はブラックライトの光をあてると、そのエネルギーを吸収して、励起状態になります。
励起状態はエネルギーの高い不安定な状態です。
吸収されたエネルギーは、一部は熱や振動などのエネルギーになり、残りは光を発して、エネルギーを外部に放出して、エネルギーの低い安定した基底状態に戻ります。
蛍光物質に吸収される光エネルギーは光で放出するエネルギーより大きいので、蛍光物質が放出する光の波長は、吸収した光の波長よりも長くなります。これは光のエネルギーは波長の逆数に比例するからです、
例えば、蛍光物質が青色の光を吸収すると、緑色の光を発する、または緑色の光を吸収すると赤色の光を発するということです。(波長:短い←青、緑、赤→長い)
ブラックライトの光はUV-Aの紫外線の波長の光で、ほとんど人間の目では見えませんが、蛍光物質にあてると、発光する光の波長は元のブラックライトの波長より長くなり、目で見える青、緑、黄などの光が見えるのです。
これが、ブラックライトをあてると光って見える原理、仕組みです。
ブラックライトの種類
ブラックライトは紫外線を発生する光源の違いにより、いくつかの種類があります。
電球型
電球型のブラックライトは白熱電球のバルブに波長400nm以上の可視光線をカットするウッドガラスを使用した簡易型ブラックライトです。
以前、電球型は使用されていましたが、白熱電球のフィラメントから放出される光の大部分は赤外線から可視光線の領域で、紫外線領域が少ないため、非常に効率が悪いブラックライトです。
電力のほとんどがジュール熱になり、所定の出力を得ようとすると電球が過熱して危険であるということから、現在はほとんど使用されていません。
水銀灯型
水銀灯はガラス管内の水銀蒸気中の放電による発光を利用したランプです。
放電中の水銀蒸気の圧力が高いものを高圧水銀ランプ、低いものを低圧水銀ランプと呼びます。
このうち、高圧水銀ランプは、UV-A領域の紫外線や可視光を発生し、水銀灯といえば、高圧水銀ランプをさします。
蛍光灯型
ふつうの蛍光灯はガラス管の両端に電極を設置して電圧を加えると、ガラス管内に満たされた水銀ガスに電子がぶつかって、アーク放電により253.7nmの波長の紫外線が発生し、ガラス管に塗布された蛍光物質にぶつかると、目に見える光に変換されます。
蛍光灯型ブラックライトは、塗布される蛍光物質を変えることにより、可視光ではなく、UV-Aの範囲の紫外線に変換されます。
これ以外はふつうの蛍光灯と同じように製造されます。
また、通常の蛍光灯では蛍光管のガラスは白色ですが、ブラックライトでは波長400nm以上の可視光線をカットするウッドガラスと呼ばれる深い青紫色のガラスが使用される場合があります。
なお、水銀汚染防止に向けた国際的な水銀規制に関する水俣条約が採択されたため、水銀灯や蛍光灯照明器具は2020年までに全て生産が中止になります。
LED型
LED照明は発光ダイオード(light emitting diode)と呼ばれる半導体に電気を流すと、半導体を光源とする照明に必要な光を作る発光ダイオードを使用した照明器具のことで、蛍光灯に代わって照明器具の主流になっています。
LED照明で使用されているLEDは可視領域の波長に光を発生させるLEDですが、ブラックライト用のLEDは発光波長の中心が400nm未満の光が出力される紫外LEDが使用されています。
発生する光の波長幅が狭くて放射効率が高く、発熱が少なく、長寿命、小型、軽量で、ブラックライトの光源として、急速に普及していています。
ブラックライトの安全性
ブラックライトの出力は高エネルギーのため、光源を直接覗き込むと、目にダメージを与えてしまう可能性があるので注意が必要です。
ブラックライトは眩しさを感じないため、うっかり直視してしまうことがあります。
作業中は紫外線防護のゴーグルの着用が望ましいです。
また、ブラックライトは日焼けの作用があります。
これを好まない人は、日焼け止めを塗ったり、手袋を着用するなど、直接皮膚に紫外線が当たらないような注意が必要です。
以上の注意を守っていれば、ブラックライトの安全性に問題はありません。
まとめ
ブラックライトは紫外線のうち、UV-A領域(UV-A: 315~400nm)の紫外線を放射する装置のことです。
ブラックライトの光を物体にあてると光って見えるのは、その物体に蛍光物質が含まれているからです。
蛍光物質は、ある波長の光を吸収すると、それより長い波長の光を放出する性質があります。
ブラックライトには電球型、水銀灯、蛍光型、LED型などがありますが、LED型が主流になっています。
以上、ブラックライトを物体に当てると光る原理、仕組みをご紹介しました。